1枚のラベルが生んだ巨大なインパクト
〜社会課題を解決する、「伝わるデザイン」というもう一つの機能〜
(株)ファミリーマート
マーケティング本部 サステナビリティ推進部 部長
大澤 寛之

1997年にサークルケイ・ジャパンへ入社後、人事・教育・FC運営・採用分野を中心に経験を積み、2019年よりファミリーマートにてサステナビリティ推進業務に従事している。2023年に同部副部長、2025年より現職。
現在は、食品ロス削減や環境配慮型施策の企画・実装を統括し、特に中食分野における廃棄削減を重要テーマとして推進。店舗オペレーションと消費者コミュニケーションを融合した実効性の高い取り組みを展開している。
2021年には、消費期限が迫ったおむすびや弁当などを対象に、バーコード付き値下シールを活用した「ファミマのエコ割」を導入。現在では全国9割以上の店舗で運用される食品ロス削減施策へと成長させた。さらに、消費者の共感を喚起する「涙目シール」を企画・推進。「たすけてください」というメッセージとキャラクター表現を組み合わせたコミュニケーション設計により、2024年の実証実験では従来シール比で購入率を5ポイント向上させ、2025年3月より全国展開を開始した。
2025年4~9月には、中食廃棄量を前年比5%削減する成果を創出。印刷物を単なる表示媒体ではなく、“消費者とつながるコミュニケーションメディア”として活用した取り組みは、食品ロス削減における新たなモデルケースとして注目されている。
<講演者の横顔:ラベル新聞2026年4月15日号>
共感生む「涙目シール」
食品ロス削減に高い効果、新たな展開も
国内最大級のラベル専門展示会「ラベルフォーラムジャパン2026」(主催・ラベル新聞社)が10月14日㈬から3日間、江東区有明の東京ビッグサイトで開催。7年ぶりに実施される「コンファレンス」では、国内外から招いたラベル関連の識者が市場動向や最新技術、活用事例などをテーマに講演する。本コーナーでは、登壇者と企業の事業展開をリポート。第2回は㈱ファミリーマートマーケティング本部サステナビリティ推進部部長の大澤寛之氏を紹介する。
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ファミリーマートでは現在、環境中長期目標「ファミマecoビジョン2050」を掲げ、2030年および50年を目標年としたうえで▽CO2排出量の削減▽プラスチック対策▽食品ロスの削減、以上の3テーマに取り組んでいる。
中でも食品ロスの削減については、全国の店舗で発生する食品ロスを30年度までに18年度対比で50%削減といった目標を示し、さまざまな施策を推進する。大きな施策として21年7月から、消費期限が近付いた食品の値下げ販売を開始。大澤氏は「コンビニはこれまで、定価販売のイメージが強かったと思いますが、近年の値下げ対応により廃棄数量は減少しています。消費期限の近い食品に値下げシールを貼付したところ、半分程度が売れるようになりました」と話す。
それでも30年度の50%削減には十分といえない状況だった。そこで新たに導入したのが「涙目シール」。同シールには「たすけてください」の文字と涙を流すおむすびのキャラクターをデザインした。
開発過程では「STOPフードロス」のメッセージやさまざまな表情のデザインを検討。消費者インタビューを実施した結果、おむすびのキャラクターと「たすけてください」のメッセージがより直感的に伝わるという評価が数多く得られた。
大澤氏は「当シールは単なる値引き表示ではなく〝共感〞を生むデザインを目指しました。店舗側の都合として受け取られるのでは、との心配もありましたが、デザインとメッセージの組み合わせにより、実際には『商品が助けてほしいと訴えている』と受け止められる傾向を確認。商品の擬人化が共感を得ることにつながったと認識しています。24年10月に東京と神奈川の6店舗で行った実証実験では、従来の値下げシールと比較して購入率が約5ポイント向上。この効果が全国で同様に得られたと仮定した場合、年間で約3000㌧の食品ロス削減が見込まれます」と説明する。
このような高い成果に基づき、涙目シールは25年3月から全国展開を開始。現在も、涙目のおむすびはファミリーマートの店舗で食品ロス削減への協力を消費者へ訴え続けている。さらに同社は新たな展開として、おむすび以外のデザインを登場させるとともにフリー素材化を実施。食品ロスの削減に向けた取り組みを社会全体へ拡げる試みを推進する。すでに一部小売店では新デザインによるシールが活用されている。
大澤氏は「このほかにも涙目シールの新たな取り組みを検討しています。シールのデザインを変えただけで、これだけ食品ロス削減の効果が出るという点で非常に意義があると考えています。10月のコンファレンスでは当シールがもたらす具体的な効果に加え、その取り組みを発表できればと思います」と語っている。

おむすびの訴えに消費者も共感